口頭発表の手引き

発表数分の一刻値万金


国際会議はもちろん,国内の会議であっても,あなたがそこで発表するために支払われた費用(旅費,宿泊費,参加登録費,別刷り代等)は膨大なものです.たとえば,それを安くみつもって10万円だったとしましょう.そして発表が10分間であったとすると,1分1万円の発表ですね.一秒一秒まで磨き上げた発表を心がけましょう.

名大内で開かれる会議のように旅費がかからないものであっても,あなたが準備に費やした時間や,発表練習に付き合ってくださった先輩や教官の時間を考えると,やはり発表迄に費やされているものは大きい.研究室内の報告会でも,あなたの発表のために集まった,多忙な先輩や後輩や教官の時間の合計を考えてみると,決してないがしろにできるものではないですね.

発表の成功のためにベストを尽くす必要がありますね.そうしないと,時間とお金の無駄使いになる.
 
 

成功した発表とは


あなたが,苦労して行った研究のすべてが,10分程度の発表で伝わるなんてありえない.詳細は予稿集を読んでもらえればいい,あるいは発表後にディスカッションすればいい.発表が終わった後から,多くの研究者があなたの研究に注目してくれればいい.その意味では,学会の講演は,コマーシャルと似ているかもしれない.
 
 

成功するためには

なにもかも詰め込もうとしないこと.研究の核が伝わること.何をやって,何が分かったか,それは何が嬉しいかが分かればいい.新規性と有効性に絞る.信頼性は質疑応答や予稿集に任せればいい.もし発表時間がもし30秒しかなかったら,何を伝えますか? それが,「核」です.新製品のテレビコマーシャルを考えてみましょう.ものすごいお金と努力と時間と知恵をつぎ込んで作られていますね.たった30秒でも,新製品の魅力は伝わっています.自分の研究の30秒コマーシャルを作るとすれば,どんな内容にしますか?
 
 
 

成功する発表のための注意事項

聴衆(読者)は誰か?

聴衆がだれであるかを考える.たとえば研究室の報告会と研究会と東海大会と卒研発表では,すべて聴衆が別.発表もそれに応じて変化しなくてはならない.聴衆の知識と理解力を十分に考慮して発表しないと,ひとりよがりの発表になる.
 

発表の構成

  タイトル:
    何をやったかを明確に印象づける.
    司会者が紹介してくれたのに同じことを繰り返さなくてもよい.

  背景:
    研究の必要性(研究の結果選られるもの意義,価値)を聴衆に理解させる.
    たとえば,何が分って何が分っていないか.この研究の位置づけを理解させる.
    研究の位置づけを理解させる道筋で,発表者の研究力量(学識経験)もアピール.

  研究の目的:
    上の背景と歴史を踏まえて,なにをどこまで明らかにするのかを述べる.

  研究の内容:
    どのようなモデルで,どのような仮定で,どのような過程で結果を導いたのか

 数値例:
    あくまで例である.
    この例から何をよみとれるか.それは数値例のどこから読み取れるかを明確に.

 結果:
   数値例が証拠.研究内容でその証拠の正当性.背景で意義がのべられていること.

 結論:
   結果の中で重要な点をまとめて,結果の意義(背景と呼応すること)をのべる.
 

発表態度
  堂々と.自分がやったこと(成果の新規性,有効性)を分かってもらえればいい.
  聴衆の過大評価をもとめるな.しかし聴衆の過小評価も許すな.