条件付採録,不採録論文の再提出について

 

 
 
 
 
 

  心構え


論文が落ちるとショックというのは良く分かります.別に,落ちても実害がないときでも,落ちるとショックです.
とおらないと困る状況(学位からみなど)ならなおさら.たとえ不採録にならなくても,不本意な条件が付いた条件付き採録も不快なものです.
 

査読委員に罵詈雑言をあびせる手紙を書き,但し,それを投函せずに机にしまっておくというテクニックを外国の本で読んだこともあります.

しかしながら,酷い査読にみえても,査読委員は一定の時間をかけてあなたの原稿を無料奉仕で読んでくださったわけです.誠意をもって,応対しましょう.

査読は大変な作業です.多くの査読委員は,(著者よりも!)丁寧に原稿を読んでいます.(著者は書くのに精力をつかっていて,他人の目で読むことが不十分)その意味で査読意見は,大変参考になるものです.

学生の提出した原稿を机に1ヶ月ほどいれっぱなしにして,それをそのまま,もう一度みなおしてごらんといって返す先生が良い先生としてえがかれている本をみたこともあります.未来・過去の自分は他人のうち冷静になって原稿をみると,先生にコメントをもらうより勉強になるいうことかと.私が原稿をチェックするのが遅いのも,この教育効果を狙っている......???
 

自分の原稿を,他人の(想定読者の目で)読むというトレーニングは,役に立つとおもいます.

査読委員は,あなたの論文の将来の読者と同じレベルか,それ以上の人のはず.その人が誤解したりピンぼけな意見を述べるのなら,将来の読者にもそんな評価をうける可能性があるということ.
 
 

具体的テクニック


査読委員が,あきらかに勘違いしているなら,丁重にしかし明確にそれを指摘するべき.しかし,査読意見に誤解や誤りがあるのは,原稿の不備も一因のはず.査読委員よりも経験の少ない,読者は同じ間違いをするはず.それを反省し,改善機会を得たことに感謝して,より良い表現に訂正する努力が必要.

査読委員が本当に間違っているかは,十分検討すること.査読委員の考えた道筋を正確にたどってみる.ありとあらゆる可能性を考えてみる.査読委員の意図を誤解して,間違った反論をすると感情問題になり,将来に禍根を残しがち.査読委員が考えた以上にしっかりと考えて,それぞれについて明確に説明する.査読委員が圧倒されるほどに.

不採録判定をした査読委員が,再投稿に対して,論文賞推薦と評価する例もあります.
(編集委員として実見したことがある.)
 
 
 

  ピンぼけ査読対策

査読委員がピンぼけに見える場合は,しばしば査読委員と著者で前提が違う場合が多い.たとえば著者が室内伝搬を想定しているのに,査読委員が衛星通信を想定していたりする場合.

研究の前提となっている部分は,著者にとっては,自明すぎて,しばしば著者本人も言語化した理解ができていない場合がある.これでは,立場の違う査読委員には理解できない.

査読委員がどんな状況を想定しているのか査読意見から読み取りましょう.このような状態のまま,再投稿をつづけると,査読委員が嫌がりだして,まともに原稿や回答文を読まないようになることすらあります.(査読委員としては,やってはならないことですが,査読委員側から見ると,どうしょうもない論文を送り付けられ続けているように見えているので...)
 
 
 

  理不尽な査読対策(かならず教官と良く相談してから行う)


あまりに理不尽であれば,最終的な採否権をもつ編集委員に訴えかける.しかし,通常,編集委員は,著者よりも査読委員の意見を尊重する.また著者からの査読委員への反論は,査読委員を選んだ編集委員への「非難・攻撃」と捉えられて,感情問題に発展しかねない.

冷静に冷静に冷静に,十分に十分に,客観的で論理的でかつ礼儀正しい文章で意見表明を行うのは,可能であるが,おすすめしない.
 
 

不採録のとき

不採録の場合も,査読意見に対する考え方は同じ.また,しばしば再投稿論文は同じ編集委員・査読委員に割り付けられるので,条件付採録の回答文のようなものを,論文と一緒に送ることもかまわない.ただし,「新規投稿であるが,編集・査読の参考資料として」であって「採否は論文で決まる」ことは十分認識すること.